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【複数の債務を請け負っている場合は?】民法改正2020年4月1日施行の基本と要所の解説(第424条の3)

複数 債務 民法改正 2020

複数の債権者からお金を貸してもらっている債務者がいたとします。この債務者が特定の債権者にだけ弁済行為(お金を返す)ということをした場合、負債を返しただけですので問題がないような気がします。しかし、例えば、特定の債権者にだけ返して破産手続きなどをされると、他の債権者が困ることになります。

 

今回は、複数の債務を抱えている債務者に対して、詐害行為取消権が使える場合を解説します。

 

第423条の3の条文

(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)

第424条の3

1 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

 

423条の3は複数の債務を抱える債務者が、特定の債権者にだけ弁済行為を行い、他の債権者を害する場合はどうなるのかという問題について表しています。

 

このような時、特定の要件を満たす二種類パターンでは詐害行為取消請求をすることができるとされています。それでは各項を順に解説していきたいと思います。

 

 

423条の3の1項のポイント

詐害行為取消請求についてこれまで受益者というのは贈与や、債務免除など明らかに利益を得ていました。しかし、423条の3が想定するのは、債権者の1人が受益者になっているというパターンです。

これまでの考えを踏まえれば、受益者となる債権者はあくまで、債権を行使しただけであって、それに対して債務者がその債権の行使に応じただけです。

 

つまり、何も問題がないように見えますが、この債権の行使によって他の債権者が全く債権を回収できないということになるのは困ります。このような特定の債権者に優遇措置をとることを偏頗行為(へんぱこうい)と呼び、偏頗行為の中で特定の場合(要するに悪質な場合)のみ、取消を認めますという立場となっています。

 

1項では、債務者が①支払不能状態であり。かつ②受益者と通謀して他の債権者を害する意図を持つ場合とあります。この2つの条件をクリアしないと取消はできないということになりますが、次のような意味になります。

 

まず、支払不能というのは、破産法第2条で次のように定義されています。

 

「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態。

 

弁済期というのは、債務を履行しないといけない時期、例えば、2020年10月3日までに返すと約束すれば、その日が弁済期になります。つまり支払不能とは、お金であれば返さないといけない時期に来ているのに、返すことができない状態を表しています。

 

また、一般的かつ継続的というのは、複数から債務を抱えている場合、1人には返せるが他には返せないというのは純粋に資産が足らなく、一般的に返せない状態です。また継続的というのは、明日大金が入るなど数日のうちに返せるという場合は除くという意味合いになっています。

 

つまり一定期間、全員に返せるだけのお金がない状態が支払不能な状態ということです。これに加えて、通謀というのは、相手と示し合わせるという意味になります。つまり、支払不能状態(破産待ったなし)であるけど、特定の債権者と組み便宜を図っている状態ということになります。

 

また、既存の債務とあるので、新たに銀行からお金を借りて、抵当権として土地を担保に入れるといった場合は「既存」ではなく「新規」なのでこの場合には当てはまりません。

あくまで、両方とも既に債権を持っていて、片方にだけ優遇するという状態だけを指すということですね。

 

 

424条の3の2項のポイント

1項では、既に履行期(返済期限)がきており、両方に返すだけの資産がないにも関わらず、片方だけに弁済するということを止めるためのルールでした。

 

2項では、まだ期限が来ていないにも関わらず弁済し、結果別の債務者には返せなくなったという場合を想定しています。

 

2項の冒頭で「債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において」とあるように、まだ履行期が来ていない時に、返済をするということは十分にありえます。

もちろん、早く返す分には基本的に何も問題はありません。しかし、複数の債務を抱えていて、早く1つを返した結果他が返せなくなるというのは問題がありそうです。

 

ここでは、次の2つを両方とも満たすときに、詐害行為取消請求ができると示されています。①その行為が支払不能になる30日前以内に行われたとき②受益者と通謀して他の債権者を害する目的がある時です。

 

1項と同様に、②の他の債権者を害する目的という点は変わりませんが、①の支払不能になる30日前以内と、1項の時よりも範囲が広がっています。1項では債務が2つであれば、2つとも履行期が来ており、片方にだけ債務を履行するという場合でした。

 

しかし、2項では受益者となる債権者はまだ履行期が来ていないが、早めに弁済をし、結果別の債務の履行が支払不能になるということが30日以内に起きれば対象となります。ただし、これは1項と同様に、運が悪く火事などで資産が燃えてしまったという場合は、他の債権者を害する目的があったわけではないので、含まれません。

 

図にまとめると上のようになります。支払不能になる30日以内に、まだ履行期が来ていない債務などを弁済するといった行為で、かつBさんにAさんを害する目的がある時にのみ詐害行為取消請求が適用されることになります。

 

こちらも旧法では、明文化されていませんでしたが、新民法では明文化されることになりました。あくまで基本的には詐害行為取消請求はできないが、2要件を満たす例外として認められるという考え方だといえます。

 

【改正後破産法】

(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)

第162条

1 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。

イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合:支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。

ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合:破産手続開始の申立てがあったこと。

二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない

424条の3も破産法との矛盾が旧法ではあり、今回の改正では、双方改正することで判例の趣旨を明文化し、破産法と合わせる形で明文化しました。基本的には詐害行為取消請求はできないけれども、ごく限られた条件を満たせば請求が可能であるということになります。

 

 

まとめ

今回は複数の債務を持つ債務者が特定の債権者にだけ、優遇するという場合に詐害行為取消請求ができるのかということを、解説していきました。

 

基本的に、優遇行為は詐害行為取消請求ができないと考えられていますが、履行期が来ている債務については、受益者と通謀し他の債権者を害する目的で行った行為であり、支払不能時に行われているという2つの要件を満たす必要があります。

 

また、履行期が来ていない債務については、受益者と通謀し他の債権者を害する目的という要件は同じですが、その行為が支払不能になる30日前にまで適用になると範囲が広がりました。

 





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