お金の貸し借りは私たちにとって必要なものですが同時に、様々な問題を生み出しています。そういった問題を解決するルールが民法です。今回は、例えば息子の借金を親(保証人でも連帯保証人でもない)が、代わりに返済するということがありうると思います。このような場合に親は、息子に「代わりに返した分を私に支払いなさい」と言えるのかどうかについて解説していきたいと思います。
このページで分かる事
499条の条文の変化
【改正前民法】
(任意代位)
第499条
1 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
2 第467条の規定は、前項の場合について準用する。
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【改正後民法】
(弁済による代位の要件)
第499条
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
499条では、珍しく改正前に比べて改正後の条文が短くなっています。変更点としては「債権者の承諾」がいらなくなっただけに見えますが、弁済と代位という語句から詳しく説明していきます。
弁済と代位とは
弁済というのは、例えば借金をした場合にお金を返すことを言います。
お金の貸し借りで借金のことを債務といい、債務を返済することを債務の履行と言いますが、弁済もほぼ同様の意味です。
代位というのは、代わりに行使できる権利のことです。
法律的には、他人の法律上の地位に代わって、その人の権利を取得し、行使することになります。
弁済による代位とは
499条では「弁済による代位」を明記しています。
弁済による代位というのは、本来の債務者でない人が弁済をした場合に、代わりに弁済した人が、債権者が有していた担保権などの権利を、行使できることです。
つまり、債権者の権利を代わりに行使できるから代位なのですね。
図にしてみると上のようになります。
本来はAとBだけの関係性で終わりますが、代わりに弁済した第三者(C)がいることで、BがAに弁済する必要がなくなります。
その代わりCさんが今度、Bさんに求償権を持つことになるというのが499条の内容になります。
ちなみに求償権というのは、「肩代わりした分を返して」ということができる権利です。
もちろん求償権を使われた場合Bさんは今度Cさんに支払わないといけません。
これが、弁済による代位の意味です。
改正による変化
改正前では、代わりに弁済した第三者は、債権者の承諾を得ないと求償権を発動できませんでしたが、民法改正後は、債権者の承諾は不要になりました。
つまり、代わりに弁済すれば誰でも求償権を得ることができるわけです。
話が変化しますが、弁済による代位には、「任意代位」と「法定代位」の2つがあります。
法定代位というのは、弁済することに「正当な利益」がある人のことを言います。
正当な利益というのは保証人や物上保証人、抵当不動産の持ち主、担保権を持つ人や、後順位抵当権者などです。
逆に正当な利益を持たない人が弁済する場合を「任意代位」と言います。
任意代位と法定代位では債務者や債権者の承諾の有無があるため異なりますが、どちらも第三者として弁済できます。(民法474条)
詳しくは474条の解説をご覧ください。
元々、改正前でも法定代位の場合は債権者の承諾が不要でしたが、改正後は任意代位でも債権者の承諾が不要となりました。
まとめ
499条では代わりに弁済した第三者が、元の債務者に求償権があるという内容でした。
代わりに弁済するときは、正当な利益があり弁済する、法定代位と、利益なく弁済する任意代位の2種類あります。
改正前では任意代位の場合、債権者の承諾を取らないと求償権を得られませんでしたが、改正後は法定代位、任意代位関係なく、承諾は不要で求償権を得られるようになりました。