依頼者が相続、遺産分割で困ってしまったケースはどのような事があるのでしょう?実務上起こった様々なトラブル事例をQ&A方式で挙げていきます。遺産分割で困らないようにチェックしてみましょう。
このページで分かる事
行方不明の相続人がいる場合
Q
子供が3人いますが、1人連絡が取れず所在もわからない為、遺産分割協議が出来ないのですが、どうすればよいでしょうか?
A
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、行方不明者の代わりに財産管理人が相続人の遺産分割協議に参加しすることで、行方不明者がいても遺産分割を進める事が可能です。また失踪宣告という制度があり、行方不明者を死亡したものとする方法もあります。行方不明になっている相続人が遺産分割協議に参加しなくても協議が成立します。
遺産分割協議後に新たな相続人が出現した場合
Q
父の遺産分割協議が終了した後に、父の愛人との子が、父の財産を相続する権利がるとして現れました。この場合は遺産分割をやり直さなければならないのでしょうか?
A
相続人が全員集まらないで行った遺産分割協議は無効となります。従って、遺産分割協議はやり直さなければなりません。遺産分割協議が終了している場合、遺産分割協議後に現れた新たな相続人には相続分の価額を支払えば良いということになっています。
H2遺産が死亡した被相続人の名義でない場合
Q
父が亡くなり、父が祖父から承継した土地を遺産分割しようとしたら、祖父が私の土地だと言い出しました。土地の登記簿の名義を調べてみると祖父名義でした。この場合はどうなりますか?
A
父が祖父から土地を譲ってもらい、自己の物だとして所有し使用していて、名義変更を行っていなかった場合、取得時効が成立する可能性があります。しかし、このような場合紛争になり裁判を行わなければなりません。裁判を行わないために祖父を交えて話し合いをせざる得ません。
相続分を母に全て譲りたい場合
Q
父が亡くなり、相続人は母と私の2人です。父の相続財産を全て母に受けてもらいたいのですが、相続の放棄をすれば良いのでしょうか?
A
父の相続財産を全て母に受けてもらいたいのであれば、相続放棄をしてはなりません。相続人が母と自分の2人しかいない場合、子であるあなたが相続を放棄した場合、あなたの子供や、父の兄弟などが新たに相続人となります。
父の財産を全て母に受けてもらいたければ、
・あなたの相続した財産を贈与する
・母が全ての財産を受けるように遺産分割協議書を作成する
このような方法が良いかと思われます。
口頭で『相続を放棄する』と言った場合の遺産分割協
Q
母は既に他界していて、その後父が亡くなり、父の相続人は私たち兄弟4人です。2番目の兄が『面倒だから相続を放棄するから遺産分割協議には参加しない。勝手にやってくれ』と言い出しました。2番目の兄は遺産分割協議に参加しなくても良いのでしょうか?
A
2番目の兄が言っている『相続の放棄』というのは家庭裁判所で正式に行った手続きによるものでなければ、口頭で言った放棄には効力を持ちません。遺産を貰わないことを放棄と言っている方が多いのですが、正式な手続きを経ない相続の放棄は『遺産分割協議で財産を貰わないことにした結果』でしかありません。
従って、口頭で放棄するといった2番目に兄は、家庭裁判所の手続きによって放棄したのでなければ、遺産分割協議に参加しなければなりません。しかし、2番目の兄を除いた遺産分割協議でまとまった遺産分割協議書に2番目の兄の合意の印を本人に貰うことでその遺産分割協議は成立します。
遺言書と異なる遺産分割
Q
父が亡くなり、遺言書がありました。遺言書には遺産の多くを長男が相続するように書かれていましたが、長男は『こんなにいらないから皆で均等に分けよう』と言っています。遺言を無視した遺産分割は出来るのでしょうか?
A
遺言書の内容は尊重されるべきですが、相続人全員の合意があれば、遺言書通りの遺産分割をしなくても大丈夫です。
特別受益証明書とは
特別受益とは生前被相続人から『相続財産分以上に贈与を受けている』事を証明し、『私は、生前相続財産分以上の財産を貰っているので相続財産はありません』といった内容に押印することで、遺産相続を受けない事を証明する制度です。
全ての相続人からこの証明書に合意の印を貰えば、相続を受けようとする相続人は遺産分割協議を行わなくても財産を単独で相続できる事になります。
先祖のお墓の承継
Q
実家の父が亡くなり、その相続人は兄弟の2人だけです。実家は売却し2人で分割しようとなりましたが、お墓は長男が継がなければならないのでしょうか?次男が実家に近くお墓にも近いので管理も比較的容易ではあるのですが?
A
墓地や位牌、家系図などの先祖を祭る財産は一般の相続財産とは別に相続されます。承継者は相続人に限られませんので、長男が承継しなければならないと言うことは必ずしもないということです。
民法では、被相続人から承継の指定があればその指定された者が相続し、指定が無ければその地方に慣習によって先祖を祭る者が承継するとしています。よって長男が承継するとは限りません。慣習が明らかでない場合家庭裁判所が決定します。