風俗営業許可申請 コラム

【風営法】パチンコ店の違法となる事例を判例から学ぶ

パチンコ 風営法 違法 事例

jarmoluk / Pixabay

 

パチンコホールを運営している皆様へ知って頂きたい事として、パチンコホールが風適法に背く違法な営業を行い一度裁判で違法となった事例に関しては同じ違法は許されません。風適法を背く違法な行為に対しては厳重な刑罰が科せられます。

 

従業員の安易な行為が企業にとって取り返しのつかない重大な損害を被る可能性がある事を認識し、健全な営業をすることが貴社の営業利益と営業権を守る事となります。

 

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遊技機の変更に関する判例

名古屋高金沢支判平成10年7月9日(高検速報平10号94頁)

モーニング機を接続する行為は『遊技機の変更』に当たる。『軽微な変更』には当たらない。

 

事案の概要

パチンコ店甲の業務を統括するAは他の従業員らと共に、店に設置してあるパチスロ機32台に、いわゆるモーニング機を設置した。甲は、この接続について、あらかじめ公安委員会の承認を受けていなかった。

 

ちなみに、モーニング機とは、回転時の稼働率上げるためにいわゆるモーニングサービスとして店側が用意する機械で、これをパチスロ機に接続すると、モーニング機から信号が反復出力され、ビッグボーナスの内部当たりの状態になったところで信号出力が停止されるようになっている。

 

これにより、客が数回遊技を行うと入賞図柄が揃う状態になる。Aと従業員Bは風営法違反の疑いで検挙された。

 

控訴棄却で有罪。

 

裁判所の判断

「遊技機の変更」の意義についてみると、「遊技機の変更」には、その語義、更にはそれについて法が公安委員会の事前の審査に係らしめている趣旨からして、遊技機の性能に影響を及ぼすおそれがある行為が含まれているというべきであり、ここに遊技機の性能には法が公安委員会において申請に係る「遊技機の変更」の承認をしなければならない場合の要件の一つとして「遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれのあるものとして国家公安委員会規則で定める基準」に該当しない事を規定していることからして、遊技の結果の決定に関わるものが含まれるというべきである。
そして、総理府令5条にいう「遊技機の性能」の意義についても、右と同様に解するのが相当である。

 

パチスロ機モーニングを接続すると、パチスロ機の電源を入れる事により、ビッグボーナスの内部当たりの状態を出現させることができるわけであるところ、そのような状態になったパチスロ機で遊技すると数回の遊戯を行ううちにビッグボーナスが作動する入賞図柄が揃い、遊技者は容易に多数のメダルの払い出しを受ける事が可能であるというのである。

 

そうすると、モーニング機が接続されたパチスロ機は、これを全体としてみると、スタートレバーを押して遊技を行う以外の方法によりビッグボーナスの内部当たりの状態を出現させることができる遊技機になったということができるから、右の接続という行為は、遊技の結果の決定に関わる遊技機の性能に影響を及ぼすものということができ、したがって、法に言う「遊技機の変更」に当たり、右のとおり遊技機の性能に影響を及ぼすものである以上、総理府令が定める「軽微な変更」にあたらないことは明らかである。

 

 

★この事例から考える

「軽微な変更」に当たる変更以外は全て「遊技機の変更」公安委員会の承認が必要になります。

 

では、「軽微な変更」とはどのような変更のことか?

それは「遊技機の性能に関わらない変更」であり、具体的に言うと、

「パチンコ玉の受け皿」
「台のカギ」
「パチンコ台のガラス」
「ウエッジ球」

のみであると考えて良いです。

 

 

かつてパチンコ店では、遊技機の部品が破損した時、修理するために新台入れ替えで不要になった同じメーカーの遊技台を保管しておき、営業中に壊れた時すぐにその場で保管していた台の部品と交換する等、日常的に行われていました。これは全て「無承認変更」となり重大な法令違反となり、第50条第1号の遊技機の無承認変更にあたり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(併科あり)が科せられると同時に
行政処分が行われます。

 

行政処分とは『指示』『営業停止』『許可の取り消し』の事を言います。

 

指示処分とは法令違反を行った営業者に対し、その是正を指示する処分の事を言います。指示は行政処分ですから、指示処分を受けた営業者は違法な営業をした事となります。

 

 

営業停止は、法令若しくは法に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害をを及ぼすおそれがあると認められるとき、又は風俗営業者が法に基づく処分若しくは許可に付された条件に違反したときは、風俗営業者に対し、6月を超えない範囲内で期間を定めて営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができます。

 

また営業停止が出来るとと同時に上記の要件を満たす場合には、許可取り消しもできます。悪質な無承認変更を行ったことで、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金更に営業許可取り消しの行政処分を受ける事は十分に考えられます。

 

従業員が行った不正改造行為を理由とする行政処分

広島高松江支判平成21年3月13日(判夕1315号101頁)
松江地判平成20年7月14日

従業員が不正改造をした場合、本件事案の下においては、社会通念に照らし全体としてみた場合に、代理人等による法令違反行為とは評価できないので、営業停止処分する事はできない。

 

事案の概要

パチンコ経営等を目的とする株式会社A商事の元従業員であるBは、パチンコ店の従業員及び店長として働いていたが、不正行為が発覚して解雇された。

 

 

解雇後Bは、自分が勤務していたパチンコ店の遊技機の主基板を取り換えて不正に利得する事を企図(きと)し、かつて店長当時部下であったC(班長)及びD(一般従業員)を唆(そそのか)し、Cが閉店まで勤務して施錠する日などを見計らい、C及びDを見張り役として、その他氏名不詳の者数名とともに営業時間外の店内に侵入し、複数回にわたって遊技機の基板を交換した。またBは、複数の打ち子を使って基板を変更した遊技機を使用させて出玉を獲得させ、それにより不正な利益を得る事を繰り返した。

 

 

A商事の営業部長は、Bの不正に気付き、管轄警察署に被害相談をしたところ、B、C、Dは上記違反行為により略式起訴され、有罪となった。
上記事実の元、公安委員会が60日間の営業停止処分をしたので、これを不服とするA商事は処分の取り消しを求めて提訴した。一審は請求を認容したので、公安委員会が提訴した。
(控訴棄却確定)

 

裁判所の判断

本件において被控訴人であったCは、本件違反行為当時、本件パチンコ店班長として、本件パチンコ店の防犯システムの作動及び解除をすることが出来るカードキーを管理することができる地位にあり、本件違反行為も、Cが管理している上記カードキーを利用して本件パチンコ店に侵入した上で行われ、また、被控訴人の従業員であったC及びDは、本件パチンコ店内にある遊技機の扉を開け閉めするいわゆる台鍵を利用し得る立場にあったのであり、これらの事情からすれば、C及びDには、その従事していた職務の内容や与えられていた職務上の権限の範囲等から違反行為をおよそ行え得る地位になかったとはいえない。

 

 

しかしながら、本件違反行為は、いずれも本件パチンコ店の元店長であったBが、本件パチンコ店の遊技機の主基板を裏ロムが内蔵された主基板に取り換えて、複数の打ち子と称する者をして上記不正改造された遊技機で遊技させ、不正に出玉させて利得する事を企て、本件パチンコ店のカードキーを所持、保管している班長のC及び一般従業員(場内)のDを内部協力者として誘い入れ、Cがカードキーを使用して施錠する日などを見計らい、氏名不詳の物数名とともに、営業時間外の本件パチンコ店に侵入し、複数回にわたって遊技機の主基板を裏ロムに交換したというものであり、本件違反行為はBを主犯とするグループによる不正出玉行為の一環であって、被控訴人の従業員であるC及びDの関与の程度は軽微であるとは言えないものの、社会通念に照らし、全体としてみた場合、もはや代理人等による法令違反行為であると評価できないというべきである。

 

 

よって、本件違反行為は、被控訴人の「代理人等が」「当該営業に関し」法令に違反したものとは認められないから、法25条に基づく指示処分、法26条1項に基づく営業許可取り消し処分及び営業停止処分をすることはできないものと言うべきである。

 

★この事案から考察出来る事

会社が関与しない、会社の従業員が起こした裏ロム基板取り付けをした事案です。外形上一般人からこの事件を見ると、特定の遊技客のみが出玉を取得しており、そのような不正を店ぐるみで行っているかのように見えます。

 

警察の判断としては、不正な裏ロムを取り付けている事は『無承認変更』を行った店舗に責任があるとして、一度は60日間の営業停止の処分を下したが、店側の処分取り消しの訴えを裁判所が認容判決したことにより、営業停止処分は取り消されました。そして、不正裏ロムを取り付けた実行犯が有罪となりました。

 

結論としては、店側には非がなく、不正を裏ロムを取り付けに関与した従業員が有罪となった事案となります。

 

このような不正を行う従業員事を面接時の雇い入れの時に見抜くことは非常に困難だと思います。従業員の不正行為によって店が営業停止などの処分を受けては経営上大きな損失を被ることになります。

 

 

ではどのように対応するのか?

 

①不正を行わせない体制仕組みを構築する

②不正が行われたことを直ぐに気付く事が出来る仕組みを構築する

③判例や事例、罪の重大さを教えるような従業員教育を行う

④防犯カメラ等の設備に投資する

以上のような対応を推奨いたします。

 

この判例により、店側が関与しない無承認変更は営業停止にはならないという判例がある事により、以後、行政庁は店舗の従業員の不正による営業停止は出来なくなっています。しかし、従業員の不正に関しては、営業停止等の処分を受けないかもしれませんが、会社経営者である役員等の不正は、営業停止等の処分を受ける可能性は十分にありますので、認識を間違えない様留意してください。

 

 

18歳未満の未成年者の立ち入りを従業員が年齢確認をしなければならない理由

大阪高判昭和63年2月24日(判時1270号160頁)

年齢確認につき無過失といえるためには、外観的事情に依拠して18歳以上であると信じたのみでは足りず、信頼しうる客観的資料を提出させて、正確な調査をするなど、社会通念上、年齢調査の確実を期するために可能な限りの注意を尽くしたと言えることが必要である。

 

 

事案の概要

X観光株式会社は、十分な年齢確認を怠り、16歳のA子をパチンコ店の従業員として雇用したため、風営法違反で検挙された。Xは、雇い入れに当たってはA子本人及び内縁の夫Bと面接し、履歴書を提出させ、住民票を持参するよう指示するなど、注意義務を尽くしたのだから、無過失の場合に当たると主張して控訴した。(控訴棄却確定)

 

 

裁判所の判断

被告人会社はその経営にかかるパチンコ店の従業員をかねてから新聞広告などにより募集していたところ、A子がその内縁の夫Bとともに昭和61年7月3日これを応募してきたので、同会社営業課長兼人事課長である被告人Xが同日右両名に面接したこと、A子は当時16才で、右従業員として採用可能な年齢に達していなかったため、予めBにおいてAこの年齢を18才と偽った同人名義の履歴書を作成し、これを右面接の際被告人Xに提出したが、同被告人は右記載の正確性をA子に問い質すこともせず、同人の体格、服装のほか、成人のBと既に同棲していることなどから、A子が18才達していると認めて、それ以上の調査をすることなく、即座に同人を→パチンコ店の従業員として雇い入れたこと、その後、被告人Xにおいて、約束の時間に出勤しなかったA子の所在を確かめるため同人方に電話をしたことがあったが、その際応接に出た家人にA子の年齢を確認することもせず、また同人に住民票の持参を求めたが提出しないまま教に及んでいる事が認められる。

 

右事実によると、被告人Xは、Bが作成したA子名義の履歴書の記載のほか、右両名の供述、A子の体格、服装及び既に同棲している事など、主として面接時における外観的事情に基づいて、A子の年齢を18才以上と認定したことと認められるところ、風営法49条4項が、年少者の健全な育成を図る趣旨から、同条項所定の一定の罪につき、雇主において18才未満の者の年齢を知らなかったとしても、そのことについて過失を無い時を除いて、処罰を免れないとした法意にかんがみると、右の過失がないと言えるためには、雇主が本件について右に認定した様な外観的事情に依拠して、その者が18歳以上であると信じたのみでは足りず、さらに進んで本人の戸籍抄本、住民票などの信頼しうる客観的資料を提出させたうえ、これについて正確な調査をするなど、社会通念上、風俗営業を営む者として、その年齢調査の確実を期するために可能な限りの注意を尽くしたと言える事が必要であると解される。

 

そうすると、右と同旨の見解に立って、被告人Xの本件における年齢調査が不十分であったとして、A子の年齢を知らなかったことにつき、同被告人に過失がなかったとは言えないとした原判決の判断は相当であって、原判決に所論のような誤りは存在しない。

 

 

★この判例から考えられる事

パチンコ店には18才未満の未成年者の立ち入りは禁止されています。これは従業員として雇うことも出来ないし、遊技客として迎え入れる事も出来ません。

 

この判例は従業員として18歳未満の者を雇い入れた場合、『青少年の健全な育成を図るため、風俗営業を営むものとして、可能な限りを尽くして年齢の確認をしなければ、年齢を知らなかったでは許さない』

という判例になります。

 

この判例はあくまで従業員として雇い入れた場合ではありますが、もし遊技客として18歳未満の立ち入りがあった場合はどうでしょう?『18才未満とは外見上思えなかったので18歳未満とは知りませんでした』

 

という言い分が通用すると思いますか?私はそうは思いません。風俗営業を営むものとして、18才未満の者の立ち入りが無いことに注意を尽くさなければならず、その証明が必要となってくるはずです。

 

ではどのような対策を店は講じなければならないのでしょうか?

①18歳未満の立ち入りを禁ずる注意喚起ポスターの設置

②店舗に関わる従業員の周知

③定期的に18才未満者がいないかどうかの巡回

④③に対してのチェック表の記入(巡回の事実の記録の作成)

⑤18才未満でないことの証明する書類の保管

 

以上のような対策を講じなければなりません。

 

もし18歳未満の者が遊技客として来店し、他者から通報され警察が来た時に、18歳以上の者が立ち入り出来ない様、店としてどのような注意を尽くしたかが問われるはずです。あいまいな受け答えや対応方法の説明では不十分な可能性があり、18歳未満の立ち入りを許していたと判断されれば行政処分は免れないでしょう。

 

参考文献:風営適正化法ハンドブック【第4版】風俗問題研究会 著
     風俗営業法判例集【改訂版】 大塚尚 著

上記風俗営業関係の判例をまとめている著書等は他にございません。風俗営業経営者は是非一度読まれてみてはいかがでしょうか。判例から適正な営業手法を考え、現場で実行出来うる施策を編み出すことが出来るかと思います。

 

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