法改正

【債権者代位権の登録・登記の請求権】民法改正2020年4月1日施行の基本と要所の解説(第423条の7)

債権者代位権 登録 登記 請求権 2020

423条は今回の改正でも非常に大きく、債権者代位権について扱ってきました。423条の7ではその債権者代位権を使う場合において、登録・登記の請求権の時はどのように考えるのかということを表しています。

 

423条の3では動産や金銭は直接請求ができるとありましたが、不動産の請求権については書いてありませんでした。登記や登録とは何なのか基本的なところから423条の7について解説していきます。

 

423条の7の条文

【改正後民法】

第423条の7

 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。

法律に慣れ親しんでいない人には非常に難解な言い回しとなっていますが、今回は用語から丁寧に解説していきたいと思います。

 

 

登記(登録)手続きをする請求権とは

423条の7には「登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利」と書いてあります。

土地などの不動産というのは、登記簿と呼ばれる公開された帳簿に登記することで、取引の際に第三者に知らせる役割があります。

 

例えば、不動産を購入して所有権を取得した人や、不動産に抵当権(いわゆる担保)の設定を受けた人が、登記手続をしていないと、他の人に譲渡できなかったりと不利益を被ることがあります。

 

このような不動産を購入した人や抵当権を持つ人が、売った人や担保を入れた人に対して、登記をこちらに移してくださいねと請求できる権利が登記手続請求権です。

 

 

上の図のように、Aさんが土地と物件を購入したとすると、BさんはBさんで登記された物件をAさんに変える必要があります。これが登記手続請求権です。同様に登録手続請求権とは自動車や大型船舶などの登録が行われている物に対して、上記の図のような購入や抵当権などをした際にすることができます。

 

 

423条の7は誰に請求をしているのか

登記手続請求は分かりにくい条文で書かれていますが、これが想定される場面を考えると意味が理解することができます。

 

まず債権者代位権の基本型は上の図のようなものでした。今回もこのABCの3名から考えていきます。

 

例えば、A土地を購入したAさんがいたとします。AさんはBさんから土地を購入したので、Bさんに登記手続請求をすることができます。しかし、登記は第三者であるCさんのままになっていると言った場合です。

 

具体的に言うならば、BさんはCさんから土地を購入します。この時点でBさんはCさんに対して登記手続請求することができます。しかし、Bさんは急いでいたのでしょうか、もしくは本当は売るつもりはなかったが急にお金が入用になったのかはわかりませんが、登記を移動させることなくAさんに売ってしまいました。

 

実は登記がなくとも、人に土地を売ることはできます。登記がないと、この場合ですとBさんが「私が持ち主だ」という主張や、Cさんの「もう私は持ち主じゃないので関係ありません」といった主張ができないということであって、売買自体はすることができるのです。

 

しかし、登記がないとAさんは不利益を被る可能性は非常に高いです。そのため、AさんはBさんに対してしか登記手続請求する権利が本来はないように見えますが、Bさんが登記手続請求権を使わない場合、Aさんが困ってしまいますので、BさんがCさんにもつ登記手続請求権(被代位権利)をAさんが代位してCさんに請求することができるという内容になります。

 

 

423条の7のポイント

非常に難解な書き方をしていた条文は次のような意味になります。

 

登記又は登録をしなければ権利(登記手続請求権や登録手続請求権)の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産(要するにBさんが登記を持っていない不動産など)を譲り受けた者(Aさん)は、その譲渡人(Bさん)が第三者(Cさん)に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する。

 

登記手続請求権や登録手続請求権を使用し、登記や登録の変更を行いたいが、お相手であるBさんが登記や登録を持っていない、そんな不動産を買ってしまったAさんは、BさんがCさんに対して登記手続請求や登録手続請求をしない時はAさんが代わりにCさんにすることができる。

この場合、前の423条の4から423条の6までの規定は準用されるという意味になります。

 

非常に難解な意味になっていましたが、特にわかりにくいのが2回登場する「第三者」という言葉です。一度目の第三者は、AさんとBさん以外の利害関係に関する第三者です。

例えばAさんが購入した建物がアパートであった場合、そのアパートに住む賃借人は、当然ですが、アパートの所有者に賃貸料を支払いますが、「登記はCさんなんだからCさんに払えばいいよね」と言われたときにAさんは対抗できない可能性があります。

 

そのため、1度目の第三者は非常に広い(もちろんCさんも含む)第三者です。それに対して2回目の「第三者」はCさんを表しています。

 

自分に直接請求はできるのか?

債権者代位権というのは、Aさんの利益を保全するために、権利を行使しないBさんに代わってCさんに対して権利を行使するという考え方でした。この時に、Bさんの権利をAさんが行使しているので、BさんにCさんは払うのが一般的な気がします。

 

この疑問に対して、423条の3では動産や金銭の場合、AさんからCさんに直接支払うことを求めることができるとありました。

 

しかし、423条の7の場合では「前三条の規定を準用する」とあることから、423条の3は入っておりません。つまり、AさんはCさんに対して、Bさんに登記を移動するように請求することができるだけであって、AさんはCさんに対して直接Aさんに登記手続を移動するようには求められないということなります。

 

なので、423条の7を使用した場合、登記は順番にCさんからBさんに、BさんからAさんにと移動することなります。

 

ちなみに、前三条である、民法424条の4(相手方の抗弁)、民法423条の5(債務者の処分権限)、民法423条の6(訴訟告知)の3つは有効ということなります。

 

まとめ

 

423条では債権者代位権について長々と解説してきました。債権者代位権の基本型は423条で説明された通りですが、債権者代位権と似たような形、例えば、今回の登記手続請求権や登録手続請求権が実質代位権と同じようになっているケースについては、債権者代位権の「転用」と考えられ、立場を明確にするために423条とは分けて個別に作られることになりました。

 

423条の7では複雑な登記の移動の場合でも、423条の7の考え方が使えば、AさんはCさんに登記手続請求権をBさんに代位して行使してCさんからBさんにBさんはAさんにと登記を移動させることができます。これは旧民法の判例でも明らかにされていましたが、それが明文化され、かつ登記手続請求権だけでなく、登録手続請求権まで範囲を拡大することになりました。

 

 

 





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