法改正

配偶者居住権の新設(民法1028条~1036条)

2019年8月12日

配偶者が居住建物を取得する場合には、法定相続分がそれだけでいっぱいとなってしまい、他の現金などの財産を受け取れなくなってしまう場合があります。

 

そこで、配偶者居住権という新しい権利を創設する事によって、建物の所有権はほかの相続人が取得して、配偶者は建物以外の財産を相続しつつ、居住する権利も確保する事で、配偶者の財産と居住をしっかり確保するような相続も可能となります。

 

 

第1028条 ~1036条 参照条文

全て追加されました。

 

第1028条(配偶者居住権)

  1. 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
     一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
     二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
  2. 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
  3. 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

 

 

第1029条(審判による配偶者居住権の取得)

  1. 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
     一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
     二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く)

 

 

第1030条(配偶者居住権の存続期間)

  1. 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

 

 

第1031条(配偶者居住権の登記等)

  1. 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
  2. 第605条の規定は配偶者居住権について、第605条の4の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

 

 

第1032条(配偶者による使用及び収益)

  1. 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
  2. 配偶者居住権は、譲渡することができない。
  3. 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
  4. 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。

 

 

第1033条(居住建物の修繕等)

  1. 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
  2. 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
  3. 居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

 

 

第1034条(居住建物の費用の負担)

  1. 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
  2. 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

 

 

第1035条(居住建物の返還等)

  1. 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
  2. 第599条第1項及び第2項並びに第621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相者居住権を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
     一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日
     二 前号に掲げる場合以外の場合第3項の申入れの日から6箇月を経過する日
  3. 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
  4. 居住建物取得者は、第1項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

 

 

第1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)

  1. 第597条第1項及び第3項、第600条、第613条並びに第616条の2の規定は、配偶者居住権について準用する。

 

 

配偶者居住権が成立する3つの要因

  1. 遺産分割
  2. 遺贈
  3. 家庭裁判所の審判

 

 

これはあくまで相続が発生した時に配偶者の権利を保護する目的に創設されたものですから、上記以外で配偶者居住権を主張する事は出来ないということになります。

 

 

配偶者居住権の要点まとめ

それでは今回の「配偶者居住権」についての要点をまとめてみましょう。

 

【どのような権利なのか?】

・被相続人の配偶者がそれまで被相続人とともに居住していた建物を相続しなくてもそのまま住み続ける事を可能とした新たな権利です。

 

 

【不動産を相続するよりはるかにお得】

・配偶者居住権にも価額としての価値があるが、所有権ほどの価値がないため、今までは建物を相続した時点で法定相続分がいっぱいになってしまって、その他の現金等を相続する事が出来ない場合があったが、配偶者居住権を新設する事で、居住を失わずに、現金等の財産を相続する事が出来るようになった。

 

 

【所有者の義務】

・所有者は配偶者居住権の登記をする義務が生じます。また配偶者は所有者に登記を請求する事が出来ます。

 

 

令和2年4月1日以降の民法改正「相続」主な改正点・概要

相続 法改正

2019/8/10

令和2年4月1日以降の民法改正「相続」主な改正点・概要

2019年1月13日施行の自筆証書遺言の方式の緩和等、相続に関する民法の改正が順次行われていきます。主な改正点としては次のようなものが挙げられます。     民法相続に関する主な改正点と条文番号 配偶者保護のための方策(民法903条) 遺産分割前に遺産を処分した場合の遺産の範囲(民法906条) 仮払い制度等の創設(民法909条) 自筆証書遺言の方式の緩和(民法968条) 遺言執行者の権限の明確化(民法1007条~1016条) 配偶者居住権の新設(民法1028条~1036条) 配偶者短期 ...

ReadMore

民法 相続 改正 法務局 自筆証書遺言の保管制度

法改正

2019/8/10

法務局での自筆証書遺言の保管制度に関する方策の創設について

法務局より相続をめぐる紛争を防止する目的に「法務局における遺言書の保管に関する法律」が成立し、令和2年7月10日に施行されます。平成30年7月6日,法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)が成立しました(同年7月13日公布)     法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」といいます。)は,高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み相続をめぐる紛争を防止するという観点から法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設けるもの ...

ReadMore

遺留分制度の見直し 相続大改正

法改正

2019/8/10

遺留分の見直しについて(民法1042条~1048条)

現行制度の下で遺留分減殺請求権の行使が行われた場合、その対象となった相続財産について共有の状態が発生します。共有物は、単独所有物と比較すると処分が困難です。例えば、土地を売却するにも共有所有者の同意の署名、押印が必要で、共有者の同意が得られなければ売却は出来ません。     遺留分減殺請求によって生ずる共有状態は、通常、被相続人の意思とは異なる内容の共有状態になるわけです。例えば、事業用の土地などを長男に承継させたいのに、次男が遺留分減殺請求を行い、その相続する事業用の土地が長男と次男 ...

ReadMore

自筆証書遺言の方式の緩和

法改正

2019/8/10

自筆証書遺言の方式の緩和(民法968条)

自筆証書遺言を作成する場合、すべてを自筆で記す必要があります。財産が多岐にわたり、不動産等の所有が多くある場合など、その不動産の地番等の情報を自筆で正確に記す必要があります。   高齢者がそのような文字を自筆で記すには非常に煩雑な作業であり、書き損じてしまった場合は効力を生じなくなってしまいます。   そこで今回そのような高齢者への配慮の為緩和する条文が盛り込まれました。   第968条  参照条文  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、 ...

ReadMore

配偶者居住権の新設

法改正

2019/8/10

配偶者居住権の新設(民法1028条~1036条)

配偶者が居住建物を取得する場合には、法定相続分がそれだけでいっぱいとなってしまい、他の現金などの財産を受け取れなくなってしまう場合があります。   そこで、配偶者居住権という新しい権利を創設する事によって、建物の所有権はほかの相続人が取得して、配偶者は建物以外の財産を相続しつつ、居住する権利も確保する事で、配偶者の財産と居住をしっかり確保するような相続も可能となります。     第1028条 ~1036条 参照条文 全て追加されました。   第1028条(配偶者居住 ...

ReadMore

遺言執行者の権限の明確化民法

法改正

2019/8/10

遺言執行者の権限の明確化民法(1007条~1016条)

遺言執行者の条文で大きく変わったのは、1015条である、「遺言執行者は相続人の代理人とみなす」という規定が消えたことだと思います。     遺言執行者に係る条文参照 第1007条~1016条 第1007条 1.遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。 2.遺言執行者は、その任務を開始した時は、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。     第1008条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、 ...

ReadMore

特別寄与分 相続人以外 貢献

法改正

2019/8/10

特別寄与分として相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(民法1050条)

今回新設された新ルールです。被相続人に対して、生前に療養看護その他の労務の提供を無償で行い、被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した人に対して、相続時にその寄与に報いる規定はありましたが、その対象は相続人に限定されていました。   しかし、相続人でない親族が、息子さんの代わりに面倒を見るような事は実際に数多くあります。そこで相続人でない親族にも相続の対象とする(特別寄与者)規定が新たに創設されたのが、以下の1050条になります。     改正後新設 参照条文   ...

ReadMore

仮払い制度等の創設(民法909条)

法改正

2019/8/10

仮払い制度等の創設(民法909条)-相続大改正

従来、死亡届を銀行に通知すると、被相続人の銀行口座は直ぐに凍結し、口座からお金が引き落とせなくなりました。解約の手続きは、相続人の全員の戸籍謄本や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要があるため、手続きが非常に煩雑でした。     そして、葬儀代金などを被相続人の預金から引き出そうとしても、凍結されているので引き落としが出来ず、困っている方は大勢いらっしゃいます。そのような現実があるため今回、被相続人の預貯金を「相続分の1/3」までは引き出す事が出来るようになりました。 &n ...

ReadMore

配偶者短期居住権

法改正

2019/8/10

配偶者短期居住権の法改正(民法1037条~1041条)

これまでは配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住をしていた場合には、原則として被相続人と相続人の間で使用貸借契約が成立していたものと推認する事としていました。   しかしこれでは、第三者に居住建物が遺贈されてしまったり、被相続人が反対の意思表示をした場合には使用貸借契約を推認する事が出来なくなってしまい、配偶者の居住が保護されないという問題があったので、このような不都合を解消するために創設されたのが、配偶者短期居住権です。   民法1037条~1041条 参照条文 第1037条(配偶 ...

ReadMore

法改正

2019/8/10

遺産分割前に遺産を処分した場合の遺産の範囲について(民法906条

民法906条は新たに遺産分割前に処分された財産について共同相続人の意思によって遺産分割前に処分された財産をどうするかの規定が追加されています。   民法906条 条文 1. 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。 2. 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在する者とみなすことができる。 3.前項の ...

ReadMore

 

 

 

 





TEL:0120-101-513



メールでのお問合せなら

24時間365日OK!!


お問合せ

-法改正

Copyright© 増野行政書士国際総合事務所~茨城県龍ケ崎市 , 2019 All Rights Reserved.