国の緊急事態宣言を受け、各都道府県が営業の自粛を要請する中、自粛要請に応じず営業を行うパチンコ店が続出している事が大きな社会問題となりました。
各メディアの有名コメンテーターもパチンコ店の在り方に疑問を呈しました。
パチンコ店に上場企業がほとんどない理由
パチンコ店会社は年間数十憶円~数百億円の経常利益が出ます。しかし上場している企業はごくごくわずかです。
その理由はパチンコ店の利益の出し方が「パチンコの釘の調整」だったり、「スロットの設定の調整」によるもの、換金の方法が「三店方式」であるからとされています。
本来パチンコの釘というのは調整しては(故意に曲げる事)ならないと法律で禁止されています。
パチンコ店が利益を生む方法として、釘を故意に曲げる事で意図的に大当たりのまで投資する金額を増やす事や、大当たり時の出玉を削減するという方法があります。
言葉を濁さず言えばこれは「違法行為」に該当します。
このような違法な方法で利益を生み出す仕組みを公に説明する事は出来ません。
また、三店方式という換金の仕組みが脱法行為だとされているからです。
この理由からパチンコ企業は上場が出来ないとされています。
三店方式とは
三店方式とは換金の仕組みの事を言います。
日本では賭博が禁止されています。
パチンコとは、お客が自身のお金で玉を借り、その借りた玉で大当たりをさせて、玉をを増やしていく遊技です。
お客は増えた玉をお店が景品として出している金景品に交換する事ができます。
お客はその金景品を買取所にお持っていくと買取所はお金で買い取ってくれます。
結果お客は使ったお金より多くの現金を手にする事ができます。
前述したとおり、日本は賭博を禁止しています。
しかし、お客は結果として、パチンコを遊技することでより多くのお金を手にすることが出来ます。
これはギャンブルになりますよね?というのが世の中の見解です。
ですがパチンコはギャンブルには該当しません。それは
①パチンコ店
②お客
③景品買取所
この③の景品買取所をお客とお店の間に入れる事で、「パチンコ店がお客と現金を直接やり取りしてはいませんよ」という体裁をとっている為です。
パチンコ店がグレーだと言われている理由はこの三店方式によりギャンブルを事実上認めているからだという事です。
三店方式は暴力団を排除するために作られた方式である
平成9年の名古屋地方裁判所の判決では
要旨
いわゆる三店方式は、暴力団排除のために作られた方式である。
遊技場業者の組合が特殊景品の購入先を1社に限定することを義務つける規約は、現在でも暴力団を排除するためあながち不合理な方法だとは言えず、有効であり、規約違反による除名処分も有効である。
昭和の時代は(昭和30年くらい)出た玉は景品(日用品など)に換えて持っていくことが主流でした。
もともと景品の店内での売買は禁止されていました。
パチンコは現在のようにギャンブル性が非常に高い遊びではなく、「大衆の娯楽」として位置づけられていました。
それがだんだんと認知度を高めていき、遊技客が増加にするに伴って、産業が発展していく中、景品の買い取りについて暴力団がパチンコ客から景品を買い、パチンコ店に売るというような行為が頻発したことによって、暴力団の排除を目的として景品の買い取り業者を一社に定めました。
これが三店方式の始まりだと言われています。
概要
パチンコ遊技は昭和30年ごろには、国民の娯楽として定着するようになっていたが、この時期は戦後の混乱期という事も相まって暴力団が遊技場に接近して、用心棒代を徴収するなどしている状況にあった。当時から遊技場業者が遊技客から景品を買い取る行為は禁止されていたが、パチンコ遊技が普及するに伴って、遊技客の中に景品の買い取りを希望する者が出てくるようになると、遊技者の中には、法を潜脱する形で、事実上景品を買い取る者も出てくるようになった。
この点に着目した暴力団は、遊技客から景品を買い取り、遊技業者にこれを再び買い取らせるという方法によって、暴力団の資金源の一つにするようになった。このような方法によれば、遊技業者は、法律に直接違反せずに、遊技者から要望の強い景品交換を実施でき、しかも暴力団から景品を購入するほうが一般に景品を購入するより安く仕入れる事が出来たことから、遊技業者と暴力団の繋がりが強くなっていった。
しかし他方、暴力団同士が遊技場業者と景品取引をめぐって縄張り争いを行い、喧嘩やけん銃発砲等が発生するようになったほか、暴力団から景品を買い取らない遊技場業者に対し、暴力団が遊技場業者の遊技客を脅すなどの妨害行為をしたりした。
警察はパチンコ業界のこのような状況を排除するために遊技業者らに暴力団の排除を呼びかけ、これに呼応した名古屋市内各区の遊技場業者らは、昭和30年前半、警察との連携を強くし、市内の警察署の管轄区域に対応して遊技場防犯組合を設立したが、すぐには事態は改善されず、ほとんどのパチンコ店に暴力団が進出するという状況が昭和34年まで続いていた。
警察はこれを黙視することは出来ず、パチンコ業界に暴力団との関係を排除し、暴力団からの景品の買い取りをしないように強く求めた。
防犯組合もこれに呼応して暴力団排除の決議をなどをしたが、状況は収まらなかった。このような状況が続くなら景品の買取が一律禁止にされる恐れもあり、そのような事態に陥ればパチンコ業界の盛衰に関わる事でもあったので、暴力団の介入を排除しながら景品を交換できるようにし、しかも自家買い禁止の法規制に違反しない方法が求められた。
そこで昭和35年5月24日、暴力団と無関係な菓子業者8社が集まり景品買取会社であるA商会を設立した。この時点でA商会が遊技客から特殊景品を買い取り、買い取った特殊景品を各パチンコ店に売るという、いわゆる2店方式が始まった。
その後2店方式ではA商会とパチンコ店との間で特殊景品が往復するだけで法律違反のおそれをクリアした者とは言えず、自家買いに近いと指摘があったことから、景品買取業者としてK産業が昭和38年に設立され、これによって、K産業は遊技客がパチンコ店と交換した特殊景品を買い取り、これをA商会に販売し、A商会が各パチンコ店に納入するといういわゆる3店方式が確立された。
参考文献:風俗営業判例集 大塚尚著
まとめ
射幸性がグーンと上がり、よりギャンブル色が強くなっているパチンコ産業ですが、昔は「1000円分の商品得した、損した」程度の大衆娯楽、遊びの範疇だったことがわかります。
獲得した商品を転売する事で、利益を(現金)を得ようと考える客が出てきた事により、それに着目した暴力団の台頭、それを排除しようとした警察、このような流れが今の3店方式を作ったのだという事がわかります。大衆の遊びだった頃は、パチンコ産業がこれほど大きな産業に発展するとは考えられていなかったのでしょう。
現在19兆市場と言われているパチンコ産業ですが、脱法的に作られた3店方式ではありますが、そもそもの目的が暴力団の排除にあったわけですから、一概に違法だというのもどうかなと思いました。
ですが事実射幸性が上がり、ギャンブル色が強くなっている現在、その在り方が問われているのだと感じます。
パチンコには様々な問題があります
・依存症の問題
・借金の問題
・射幸性を煽る違法行為の問題
・行政指示に従わない問題
このような問題にしっかりと向き合っていかなければなりません。
またパチンコ産業と警察の関係では、変更承認申請手数料というものが新機種の導入のたびにパチンコ店から支払われます。
変更承認申請書 5200円+設置台数×40円
他にも、認定申請や管理者講習など手数料がかかります。
全国のパチンコ店が9000店舗あり、そのほとんどの店舗が何かしらの形で管轄の警察署に手数料を支払っています。
毎月10,000円の手数料を9,000店舗が支払っていると仮定すると
警察の収入は毎月9,000万円の収入があると言事になります。
確かにパチンコ店は行政指示に従わなかったりと社会問題になっていますが、国の大きな収入源にもなっている産業です。
この部分がある限り、一気に縮小させる事を国は行わないと感じます。
3店方式がグレーではあると感じますが、私は、パチンコ店を営む企業には法律違反をした場合に、大きな罰金を課すようにすれば良いと思います。
単に税金を上げるという事になると、その回収はお客からになってしまいます。
また、チェーン展開させる場合の認可の審査基準のハードルを上げるなどを行った方が良いと思います。