423条から債権者代位権についての変更点をまとめてきました。今回も新たに新設された条文で、債権者代位権をAさんが行使した際に、債務者BさんとCさんの関係が例えば、非常に仲が良くCさんがAさんに直接ではなくBさんに返すということを拘ったらどうなるのでしょうか。
今回は、CさんがBさんに債権を履行することができるのか、またBさんはその債権をどのように扱えるのかを解説していきます。
このページで分かる事
423条の5の条文
第423条の5
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
423条の5は、AさんではなくCさんやBさんの視点から見た場合です。423条の3の債権者代位権では、AさんはCさんに直接支払ってねということができました。
しかし、それは支払ってねということができるだけであって、BさんがCさんに支払ってねということを妨げるものではないと表しているのが423条の5ということです。
この423条の5の条文からはBさんがCさんに支払ってねということもできるし、Cさんがそれに応じてBさんに債権を履行することもできると明文化されています。
423条の5のポイント
423条の5を図に表すと上記のようになります。
Aさんは債権者代位権としてCさんに支払いを直接求めることができます(423条の3)これに対して、BさんもCさんに支払いを求めることができます。
Cさんは、どちらに対して支払ってもよいということになります。
聞いてみるとごく納得できる内容ですが、なぜこのようなルールが明文化されたのでしょうか。
それは旧民法の判例において、Aさんが代位権を行使すると、債務者Bさんは、被代位権利の処分権限を失うことになっていました。そのため、処分権限がないのだから、債務の履行もすることができないよねという論法でCさんはBさんに支払いをすることができませんでした。
しかし、債権者代位権というのは、債務者Bさんが無資力であるときに使えるものであり、BさんがCさんから債権を回収する意思があるということは、無資力とは言えなくなってしまいます。
つまり、債権者代位権自体が、債務者が自らの権利を行使しない(取り立てをしない)ことを想定して作った制度であるため、取り立てをするようであれば、それの制限をするということはおかしなことになってしまいます。
今回の改正では、このような批判の多かった旧民法の判例に対して明確に、Bさんが支払いを求める、権利を行使するのであれば、Cさんはどちらに対して履行をしても問題がないということが認められたということです。
まとめ
債権者代位権を用いる場合、旧民法では代位権を行使した段階で、債権者AさんからCさんに行使するとBさんはCさんに権利を行使できないと判例ではなっていました。
しかし、そもそも債権者代位権はAさんの利益を守るために、Bさんが権利を行使しない場合を想定して作ったものであったので、Bさんの処分権限を侵害する必要はありません。
このような批判を受けて新民法では、Aさんが代位権を使用した場合にも、Bさんが権利を行使することができ、またCさんはどちらに対して履行しても良いことが明文化されました。
債権者代位権があくまで、債権者の利益を保全する目的であることと、強制執行の前段階的という考え方が理解のためには重要であるように感じます。