将来債権という、将来発生するだろうという債権があります。この将来債権も譲渡することができます。今回は未来の債権についての基本ルールと、譲渡の制限の意思表示がある場合を解説していきます。
466条の6の条文
【改正後民法】
(将来債権の譲渡性)
第466条の6
1 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
3 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第1項)の規定を適用する。
従来の民法では、将来発生する債権については、記述がありませんでしたが、今回の改正で明文化されることになりました。
将来債権とは
将来債権とは将来に発生するだろう債権です。例えば、毎月同じ商品を買うという約束をしている会社Aがあるとして、売っているBは毎月売っているので、来月も売ることができるだろうと思っています。この時来月の分はまだ時期が来ていないため、来月分の支払いをするという債権は将来に発生するはずの債権です。
もしかしたら突然の災害で、取引ができなくなることもあるかもしれませんが、現時点では、将来発生しそうだと考えられる債権になります。こうした将来発生する債権も譲渡することができます。(466条の6の1項)
未来の発生する債権を譲渡することで、来月には、Bは商品は渡すけども、Aからの売上は譲渡された先に渡すということになります。譲受人は、未来の約束でしたが、もちろん受け取る権利があります(466条の6の2項)
来月に入るお金の債権を先に渡しておくということができるというルールになります。
では、債務者が譲渡に反対した場合はどうなるのでしょうか。
対抗要件具備時
466条の6の3項では、債務者が譲渡の制限をする場合について明記されています。しかし、将来債権はまだ発生していないうちに渡されているため、いつ債務者が譲渡制限の意思表示をするのかが問題になります。
この時にでてくる言葉が「対抗要件具備時」です。対抗そのものは、467条で詳しく解説していきここでは、何をすれば債務の履行をしなくてよいのかの条件だけを紹介します。
それは、対抗要件具備時より前に、債権者と債務者が譲渡制限の意思表示をしていた場合は、譲受人その他の第三者は、譲渡制限の意思表示を知っていたものとみなされます。この条件に当てはまった場合は、466条の3項が適用され、債務者は譲受人に履行しなくてもよいとなります。
対抗要件具備時とは、債務者に対して対抗するために、譲渡人からの通知か、債務者の承諾が必要で、これが通知や承諾された時のことです。債権を譲渡しますよと通知をする前に、債務者が、譲渡を制限していたらダメということです。
逆に、対抗要件具備時より後に譲渡制限の意思表示をしても、債務者は譲渡禁止の意思表示で譲受人に対抗することはできません。
まとめ
将来発生するだろう債権を将来債権と言いました。将来債権は、他の債権と同様に、譲渡することができ、もちろん譲渡された人が債権を受け取る権利があります。
ただし、例外として、対抗要件具備時よりも前に債務者が譲渡に反対した場合は、債務の履行を譲受人にせずに、譲渡人に履行することができます。