法改正

【許容判決の効力が及ぶ者の範囲】民法改正2020年4月1日施行の基本と要所の解説(第425条)

 425条では、詐害行為取消請求の裁判の結果が、誰に効力を及ぼすのかという点について書かれています。普通の民事訴訟の場合は、当事者にしか効力を及びませんが、詐害行為の取消の場合は、誰に効力が及ぶのでしょうか。

解説していきたいと思います。

 

 

425条の条文

425条は改正前から重要な文言が取り入れられた条文になります。

 

【改正前民法】

(詐害行為の取消しの効果)

第425条

 前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

【改正後民法】

(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)

第425条

 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

425条では、効力が及ぶ範囲に、「債務者」が追加されました。それでは425条がどのような意味を持つのかを解説していきたいと思います。

 

 

425条のポイント

詐害行為取消請求の裁判では、受益者や転得者を被告として、裁判をする必要がありました。(424条の7)

通常の民事訴訟の裁判では判決の効力は当事者にあります(民事訴訟法第115条)

 

【民事訴訟法】

(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)

第115条

1 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。

一 当事者

二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人

三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人

四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者

2 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

この場合、原告である債権者と被告である受益者は明らかな当事者ですので、効力が及ぶと考えられます。

 

判決の効力というのは、判決が確定すると、訴訟の対象である権利・義務ないし法律関係(訴訟物)が確定し(既判力)、相手方や当事者が判決に任意に従わないときは、裁判所に判決の執行を求めることができる(執行力)力のことです。

詐害行為取消であれば、詐害行為の取消の判決が確定すれば、受益者はお金や物を返還しなければなりません。もし、返還に応じない場合は、裁判所の執行が下ることになるでしょう。

 

これが判決の効力ですが、これらが及ぶのはどこまでなのかということになります。

 

425条では「債務者及びその全ての債権者」という非常に広い範囲に効力が及ぶとなっています。その訴訟の当事者である、債権者や受益者だけではなく、債務者全ての債権者に効力を及ぶという点がポイントになります。

 

 

債務者が入った理由

債務者は元々裁判の当事者ではなく、訴訟告知をされ、裁判に関わることはできますが、原告でも被告でもありませんでした。

そのため、従来の判例では、債務者は判決の効力に入らないという判例が出されていました。

 

しかし、今回の改正では、判例とは異なる立場を取り、債務者も効力に含まれています。

 

このようなことが起こった理由として、債務者を実質的な当事者として扱っていた判例もあったことが挙げられます。

例えば、動産や金銭に関しては、受益者から債権者が直接受け取ることができましたが、不動産については、債務者に登記が戻るように、債務者から受益者に登記が移動することを抹消する手続き(所有権移転登記の抹消登記手続)などが認められていました。

 

判決の効力に入らないと言いつつも、債務者が効力の中に入るような手続きが取られていたわけです。

こうした矛盾を解決するために、債務者が効力の範囲内に加わり、これに伴って、425条の2から4が新設されました。

 

 

まとめ

詐害行為の取消請求は裁判を通じて行われるため、その判決の効力の範囲がどこまでなのかということを明文化しているのが、425条です。

今回の改正で、当事者と全ての債権者に加えて、債務者が判決の効力の中に入りました。





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