466条では債権の譲渡についての基本ルールと、債務者が反対した場合のルールについて、明確にされていました。次なる466条の2では債務者が反対した場合の「供託」について定めてあります。この記事では「供託」について詳しく解説していきます。
466条の2の条文
(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
第466条の2
1 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
3 第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
この条文は改正と共に、新しく追加された条文です。改正前に比べて債権の譲渡について基本のルールが変わったため、それを補う形で、466条の2から6が追加されました。ここでは「供託」という特殊パターンを明らかにしています。
供託とは
供託というのは、「供託所」という公共機関を通じて弁済をすることで、債権を消滅させる行為です。民法494条で示されています。簡単に表すなら、借りたお金を直接債権者に返すのではなく、公共機関を通じて返済するという手法です。
(供託)
第494条
1 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
弁済者というのは、借りたお金などを返す人、つまり債務者と同じです。通常であれば債務者は債権者に直接、弁済をすればいいのですが、様々な理由があり、債権者が受け取ることができないという場合もあるかもしれません。
そのため、494条では、債権者が受け取れない場合や、債権者が弁済を受け取るのを拒否した場合には、供託という手法を使えると示されています。(494条の1項)また、弁済者から見て債権者が誰かわからないという場合も、供託を使うことができます。(494条の2項)
ここで、466条の2に戻ると、債権の譲渡が行われた場合に、供託という手法は使えるのかということが問題となってきます。
債務者が債権の譲渡に反対した場合の供託
466条では、改正前と異なり、債権の譲渡を債務者が止めること(譲渡制限)はできませんでした。そのため、譲渡自体は行うことができますが、反対の意思表示を債務者がしていれば、譲渡された先の債権者(譲受人)には債務の履行をしなくてもいいというのが、新しいルールでした。(466条の3項)
そもそも、債務者が反対をするということは、債権を譲り受けた人に信用がない、または良い感情を抱いていないということなので、間に公共機関である供託所が入ってくれれば、譲受人に返済してもいいと思う人がいるかもしれません。
466条の2ではそういった事情を踏まえて、「金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたとき」は、「供託所に供託することができる。」とされています。
特に制限がされていないため、金銭の債権譲渡であれば、供託所に供託することができます。
供託できる場所
供託所は日本全国どの場所でも良いわけではありません。原則、「債務の履行地の供託所」となっています。(484条1項)つまり、債権者の現在の住所の供託所に限るということです。
しかし、466条の2では、「債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む」とあるので、債権者(債権を譲渡された人、譲受人)の住所だけでなく、債権を譲渡した人(譲渡人)の現住所の供託所で手続きが可能になっています。
譲受人が遠い場所でも、譲渡人が近くにいれば、譲渡人の現住所の供託所で手続きができることになります。
供託できる相手は譲受人だけ
供託所に供託をしたら、債務者は譲渡人と譲受人の両方に通知をしないといけません。(466条の2の3項)しかし、結局受け取ることができるのは、譲受人だけです。(466条の2の4項)
つまり、供託所に間に入ってもらうというルールを作ることで、債務者の心情的負担を軽くする狙いがあると考えられます。
まとめ
債務者は、債権の譲渡に反対をすることはできますが、債権の譲渡を禁止することはできませんでした。そのため、反対した場合の措置として、ここで条文では、供託という制度を使い、債務者の心的負担を取り払おうとしています。
供託とは、公共機関の供託所を通じて債務を弁済する方法であり、債権の譲渡の場合では譲渡人か譲受人の現住所の区間ある供託所で、手続きすることができます。しかし、供託をしても受け取ることができるのは、債権を持っている譲受人だけなので、譲渡の妨害をしているわけではなく、対抗措置として使えるものではありません。