501条では、「弁済による代位」(499条)を実際に効力を持たせるためのルールを定めたものです。弁済による代位というのは、本来の債務者に代わって弁済した第三者が、元の債務者に求償権を持つということでした。
今回は、そんな弁済による代位の実際の効果や範囲について解説していきます。
第501条の条文
【改正前民法】
(弁済による代位の効果)
第501条
前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
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(弁済による代位の効果)
第501条
1 前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
2 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
3 第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
一 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
二 第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
三 前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
四 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
五 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号及び第二号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号及び前号の規定を適用する。
501条は非常に長い条文で、3項構成になっています。今回は、1項ずつ順番にみて解説していきましょう。
501条の1項
501条の1項では499条で定めた内容の法的な効果を定めています。
第499条
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
499条では弁済したら債権者に代位しますと書いてあります。
でも何ができるのかは書いてありません。
そこで501条の1項で「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」と定めて、債権者が持っていた権利を全部使えますよとなるわけです。
つまり、土地の担保であったりを弁済者が引き継ぐことができるのです。
弁済による代位には、「任意代位」と「法定代位」がありましたが、どちらの場合も同様です。
まとめると、弁済者は債権者が有していた権利はなんでも使えますよというのが501条の1項です。
502条の2項
502条の2項では債権者に対して求償できる限界、つまり求償権の範囲についてまとめられています。
求償権というのは、「肩代わりした分を返して」ということができる権利です。
501条の1項では債権者の権利を使えると書いてありましたが、それも無制限ではないということです。
例えば100万円の債権を代わりに弁済したとします。ならば100万円の求償をすることができます。
もちろん200万円に増やして求償することはできません。減らすのは問題ありませんが増やすのはアウトです。
例えばBさんがAさんに100万円の債権を借りるために、不動産を抵当権を設定していたとします。BさんはCさんを保証人していましたが、Bさんが返せそうになかったので、Cさんが代わりに弁済しました。
これは正当な利益があるので、法定代位です。CさんはBさんに100万円の求償権があります。つまり抵当権の行使もできてしまうわけです。この時に100万円をこえるような求償はできません。
ただし、保証人Cさんが、委託を受けない保証人であったり(改正後民法462条)、事前・事後の通知を行っていなかったり(改正後民法463条)すると、求償権が制限される場合があります。
また501条の2項では、保証人同士の求償権についても書かれています。
例えば200万円の債権を1人の保証人が全額弁済したとします。しかし保証人はもう1人おり、弁済した保証人からすると半分払ってくれよとなります。
保証人の負担割合は大抵5:5なので100万円の求償権を求めることができます。
最初の契約時の負担割合にもよりますが、負担割合までしか求償権を実行することはできないということになります。
501条の2項は簡単に言うと、求償権として求められる金額以上には債権者の権限は発動できませんよということです。
501条の3項の1
501条の3項では、第三取得者・保証人・物上保証人等の利害関係など細かい部分の調整を図っています。全部で5項目あるので順に解説していきます。
501条の3項の1では「第三取得者は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。」とあります。
第三取得者というのは、債務者から担保の目的物を譲り受けた人のことです。担保を持っている人と書いた方がわかりやすいかもしれません。
この担保をもった第三取得者は、正当な利益を持つので、第三者として弁済して代位することができます。ただし、保証人や物上保証人に対しては代位できませんよと示してあるのが、3項の1です。
物上保証人というのは、他人の債務を担保するために、自己所有の財産に質権または抵当権を設定した者のことです。普通の保証人とは異なり、債務者の債務を弁済する義務はなく、単にその提供した財産の範囲で物的有限責任を負うにとどまります。
つまり、物上保証人や保証人の方が第三取得者より優位だということです。
代位はなんでもできるわけではなく、第三取得者の場合は、保証人や物上保証人に取り立てることができないということですね。
501条の3項の2と3
3項の2では第三取得者が複数いた場合です。
この場合では、「第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。」
なんと複数の第三取得者がいた場合は、他の第三取得者に対して代位することができます。
同じ第三取得者でも弁済して求償権を持てば、他の第三取得者に各財産の価格に応じて、代位できるわけですね。
各財産の価格に応じてというのは、例えば不動産であったら100万の不動産の担保をもっているAさんがいます、AさんはBさんの代わりに200万の弁済をしたとすると、100万の不動産担保をもっているので残り100万円の求償権を求めることができます。同じくBさんの担保をもつCさんが50万円の不動産をもっていたとすると、Aさんは代位してCさんから徴収することができます。
3項の3では物上保証人が複数いた場合です。
この場合も3項の2と同じく、弁済して代位をもつ物上保証人は、他の物上保証人に代位して求償権を行使することができます。
501条の3項の4
501条の3項の4は保証人と物上保証人との関係です。
この場合は、「保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。」とあります。
つまり、保証人Cが300万円の借金を代わりに弁済したとするときに、物上保証人Dもいたとします。
しかし、これまでと違い保証人Cと物上保証人Dは対等な関係になるので今までのように全額求償することができません。
今回の300万であればその半分、人数に合わせて等分した残りを求償することができるのです。
つまり、Cさんは150万円は負担しないといけないのでDさんには150万円の求償を求めることができます。
ここに物上保証人Eさんがいた場合は1/3となり、Cさんは100万円を負担して、残りDさんとEさんに100万円ずつ求償することができます。
501条の3項の5
最後の3項の5は補足的な文言です。
第三取得者が他の人に譲った場合や、物上保証人が他の人に譲った場合です。
この時次のようになります。
・第三取得者から担保の目的となっている財産をさらに譲り受けた者は、第三取得者とみなされます(改正後民法501条3項5号)。
・物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなされます(改正後民法501条3項5号)
つまり、譲り受けた人が第三取得者あるいは物上保証人とみなされるというわけですね。
まとめ
今回は、代わりに債務を弁済した第三者が、「肩代りした部分を払ってね」と誰に、どれくらい言えるのかについて解説してきました。
501条の1項では、肩代りした人は債権者に代わって一切の権利をもつと書いてあります。
しかし、それは無限ではありません。制限する内容が2項以降にあります。
2項では、求償できる範囲は肩代りした金額までになります。さらに「肩代りした人」が保証人などであった場合は、他の保証人とは対等な関係なので、半分までしか求めることができません。