民法903条はもともと3項までしかありませんでした。今回の改正で4項が追加されています。
1. 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2. 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3. 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
4. 婚姻期間が二十年以上である夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与したときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思表示をしたものと推定する。
第4項のマーカー部分の条文が追加されることになりました。
では、この条文追加の狙いを見ていきましょう。
民法903条の第4項の追加の狙い
被相続人が推定相続人に建物や土地を生前贈与した場合、後日実際に相続が発生した時には他の相続人との公平の見地から贈与を受けた財産も相続財産に一旦戻した上、各相続人の相続分を計算する事となっており、それは20年以上の長期にわたり結婚生活が継続していたとしても例外ではなかったのです。
しかし、これでは被相続人がせっかく配偶者に自分たちが住んでいた家などを贈与しようとした意思が相続に十分に反映されない事となります。
そのような、点を改めるために追加されました。
民法903条第の第4項の要点
今までは、例えば、夫婦の旦那様が死ぬ前に土地などを奥様に贈与していた場合、旦那様が亡くなり相続を開始した時に奥様は生前に贈与された土地の価額について、今回旦那様が亡くなって始まった相続財産から受け取った事にしなければならなかったのに対して、改正以降は「20年以上の婚姻期間がある夫婦は、贈与された土地に関しては相続財産に含まないと推定される」となっています。
要するに、20年以上結婚していれば、配偶者の権利が保護される可能性が上がり、また受けとれる相続財産が増えるという事が言えます。
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