法改正

【債権者への支払又は引渡し】民法改正2020年4月1日施行の基本と要所の解説(第424条の9)

新設された詐害行為取消請求の最後の条文になります。

詐害行為取消請求では、債務者の詐害行為を取消することができました。しかし、詐害行為の取消は、あくまで債務者の責任財産を回復させることが目的なので、そのまま考えると取消をした、金銭などの贈与は債務者に返還されてしまうような気がします。

債権者は直接自分に引き渡すように請求することはできるのでしょうか。解説していきたいと思います。

 

424条の9の条文

(債権者への支払又は引渡し)

第424条の9

1 債権者は、第424条の6第1項前段又は第2項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない

2 債権者が第424条の6第1項後段又は第2項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

424条の9では債権者に直接支払うことができるかについて明文化されています。こちらも新設された条文で、従来の判例法理を踏襲したものになります。

 

 

424条の9のポイント

詐害行為取消請求と返還の請求する場合、債権者は自己に直接、金銭の支払いや動産の引き渡しを求めることができます。(424条の9の第1項)

 

ポイントは、金銭動産の場合は直接支払いを求めることができるという点です。つまり、不動産の場合は、この条文には明記されていません。

また、詐害行為で取消がされ、債権者に支払いをした場合は、受益者や転得者は債務者に返す必要はありません。(債務者にも返すと、二重で返すことになってしまいますので当然のことかもしれません)

上の図のように、受益者Cさんは直接Aさんに引き渡しをすることができ、それをした場合、Bさんに渡す必要はありません。

これは、返還の請求だけでなく、価格の償還の場合も同様です。(429条の9の第2項)

 

 

詐害行為の種類

424条の9では、金銭と動産の場合については明文化されていましたが、不動産はどうなるのでしょうか。
ほかの場合もあるのでしょうか。詐害行為は次のような種類があります。

 

①金銭の贈与

②動産の贈与(宝石など)

③不動産の贈与(土地や建物)

④債権の譲渡や債務の免除

金銭・動産は債権者が受領可能です。これは、従来の裁判判例であった通りです。本来は、取消をした財産は、債務者から債権として支払ってもらうのが筋ではありますが、そもそも財産を隠してしまうような人物であるため、せっかく取消をしても、債務者の手に金銭が渡ればごねてくる可能性もあります。

そのため、直接債権者が受領することを認めているわけです。

 

では不動産や、債権の譲渡などの金銭や動産でない場合はどうなるのでしょうか。

 

不動産の場合

不動産の贈与を詐害行為として取消することはできます。しかし、この場合、不動産の登記を債権者にすることはできません。

詐害行為は、債権者からすると余計な行為をしたものを、取消するということです。不動産に関しては、債権の回収手段として、差し押さえなどの手続きを取ることができますので、登記を債務者に戻すということが一番大切になります。

 

そのため、債権者にできるのは、受益者から不動産の登記を債務者に戻すということだけです。なので、具体的に債権者が取れる手は、債務者から受益者へ登記が移動した時の所有権移転登記について抹消登記手続をするか真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を取ることだけです。

 

 

債権の譲渡や債務の免除の場合

債権の譲渡や債務の免除の場合も、直接受け取るということはできません。債権の譲渡については、受益者への詐害行為を取り消し、債務者に債権を戻した後に、取り立てる必要があります。

その際に債務者が債権を行使をしない場合は、債権者代位権(民法423条)を使用することになります。

 

債務の免除の場合も、その行為を取り消した後に、債務者が自らの債権を行使しない場合は、債権者代位権のルールを使ことになります。

 

そのため金銭や動産の方が、元々の詐害行為の取消を行うことで債務者の責任財産を回復するという考えとは離れて、実利を取った形になります。

本来的には、詐害行為を取り消し、債務者から取り立てるのが基本の形になります。

 

 

複数債権者がいた場合はどうなるのか

債務者に対して複数の債権者がいる場合があります。この場合、債権者の1人(取消債権者)が第三者の受益者を詐害行為として、直接金銭を受け取り、債権を回収した時、他の債権者はどうなるのでしょうか。

 

なんと、この1人だけ詐害行為を取消し、債権を回収した債権者は、他の債権者にこのお金を配る必要はありません。

抜け駆けができるのです。また、特定の債権者への偏った弁済(偏頗弁済)という詐害行為を取り消した場合だと、取消した債権者だけが抜け駆けできるという不思議なことが起こります。

 

偏頗弁済を受けた受益者であり債権者も、債権者なので取消債権者と仲良く分け合えばよいような気がしますが、判例では取消債権者が事実上の優遇措置となります。

 

 

まとめ

詐害行為の取消を行った債権者は、金銭や動産の返還であれば、債務者に一度返還することなく、直接受け取ることができます。また、価格の償還も同様です。

 

不動産の場合は債権者が直接、受け取ることはできません。この時に債権者ができることは、受益者から債務者に登記を戻すことだけです。

また、債権の譲渡や債務の免除についても同様に、債務者に戻すことはできますが、直接債権者が受け取ることはできません。

 

複数の債権者がいる場合に、1人の債権者が詐害行為取消請求を使い直接債権を回収した場合は、事実上の抜け駆けをすることができてしまうので注意が必要です。

 





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