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【損害賠償請求権の消滅時効とは】民法改正2020年4月1日施行の基本と要所の解説(167条)

損害賠償請求権 消滅 時効 民法改正 2020 基本

前回の第166条で、消滅時効について解説しました。今回は消滅時効の特則である、人の生命や身体の侵害による損害賠償請求権の場合について、解説していきます。

 

 

民法第167条の条文

第167条

 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

 

 

第166条

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

 

 

167条のポイントは?

167条は、人の生命や身体の侵害による損害賠償請求権については、166条1項の2(客観的起算点から時効は10年)の規定を10年ではなく、20にするというものです。

 

客観的起算点とは、権利を行使できる時からという意味でしたが、この場合166条では10年でした。しかし、人の生命や身体の侵害による損害賠償請求権の時は20年になりますよ。という例外を表しています。

 

 

166条と167条の消滅時効をまとめると次の表となります。

166条の1項の1

主観的起算点(権利行使ができることを知ったとき)

時効の期間は5年

166条の1項の2

客観的起算点(権利行使ができるとき)

時効の期間は10年

166条の2項

債権と所有権以外の財産権(客観的起算点)

時効の期間は20年

167条

人の生命や身体の侵害による損害賠償請求権(客観的起算点)

時効の期間は20年

 

人の生命や身体の侵害による損害賠償請求権とは?

人の生命や身体の侵害の場合、不法行為の対象になることが多いです。不法行為における、消滅時効は改正後民法724条が対象になり、167条は対象になりません。

 

第724条

 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

 

第724条の2

 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

そのため、民法167条で想定されている人の生命や身体の侵害は、労災事故、医療事故等の、債務不履行に基づく損害賠償請求権です。労災があったが、債務を履行してくれないという場合で客観的起算点の場合には、20年間の時効があるということですね。

 

 

表にすると次のようになります。

債務不履行の損害賠償請求権

主観的起算点から5年(166条1項1)

客観的起算点から20年(167条)

不法行為の損害賠償請求権

主観的起算点から5年(724条の2)

客観的起算点から20年(724条)

債務履行の場合でも不法行為の場合でも、法律の条文は違いますが、時効の期間は統一されていますので、生命や身体への侵害の時の損害賠償請求権は主観的起算点から5年、客観的起算点から20年と理解しておけば問題ありません。

 

まとめ

人の生命や身体が大切であることは、今さら言うまでもないことですが、大切であるため、時効の期間も例外的に規定されています。

 

主観的起算点からは5年、そして客観的起算点からは20年となっており、不法行為の場合でも契約における債務不履行の場合でも同じになっています。

 





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